
語れる、そんな場に出会えた。
鈴木涼介/RYOSUKE SUZUKI
電気電子工学科卒
大学3年の夏頃、私は大学院に進学するか、企業に就職するか、進路について悩んでいました。そこで、いろんな企業のインターンシップに参加してみて、面白いと思える仕事に出会えたら就職しようと考えていたところ、ちょうど自分が興味のある領域のインターンシップがHondaで開催されることを知ったのです。それは二輪車の電装システムの研究開発のコース。私は大学で制御工学を専攻していて、個人的にもバイクが好きでしたので、電気でマシンをどうコントロールしているのか、そのメカニズムを理解したいという純粋な好奇心と、自分がまだ知らない技術を学べればという期待をもって参加しました。2週間のインターンシップでは、Hondaの技術者の方々と一緒に二輪車に関わるさまざまな研究開発業務に携わりました。電装系だけではなく、3D CADを使ったモデリングなど、電気制御が専門の私にはまったく畑違いの業務も経験。このモデリングは、インターンシップ生向けにスマートフォンケースをCADで自由にデザインし、3Dプリンターで製作するという実習が用意されていて、新しいスキルを学びつつ、私にとっては未知の「ものづくり」の面白さを味わうことができました。
業務以外で技術者の方々と懇談できる場も設けられていて、みなさんとの対話もとても刺激的でした。Hondaは二輪車では世界のトップメーカーですが、その誇りと責任を強く感じてみなさん仕事に取り組まれていました。『ただバイクを開発するのでは意味はない』とか『Hondaだからこそ実現できる製品を追求しなければ』とか、熱い言葉が先輩方の口から次々と飛び出してきて……たとえば、まだ自動車が普及していない途上国ではバイクは生活の必需品であり、少しでも安くて良いものを提供することで、そうした国の人々の力になりたいなど、仕事の夢を堂々と語っていらっしゃった。大人になると、自分の夢を人前で話すなんて恥ずかしいことだと思っていたのですが、けっしてそんなことはなく、みなさんの思いに触れて心を動かされました。私は読書が趣味で、こちらのインターンシップに参加する以前、Hondaの創業者の本田宗一郎氏が書いた「夢を力に」を読んだことがあります。その本のなかで宗一郎氏が語った『技術は人を幸せにするためにある』という言葉に私は感銘を受け、まさにその通りだと共感していました。その精神がHondaには本当に受け継がれていて、私もぜひ倣いたいとその時強く感じました。
それに気づかせてくれた2週間だった。
このインターンシップを通して、本当にいろんな発見がありました。二輪車の開発は、四輪車の開発に比べて業務が細分化されておらず、エレキ・メカ・制御が一体となって新しい製品を作り上げていく。それぞれの技術者がトータルにマシンの開発に関われるのです。したがって自分の専門外のことも理解しておかなければならず、だからインターンシップでも電装系以外の開発業務を経験したのだと気づきました。また、今後は二輪車においても、安全や環境性能を向上させるためにコンピュータ制御による電装技術がさらに重要になり、自分の専攻を活かして活躍できるチャンスが大きいこと。そして何より、Hondaのみなさんと深く接して、『自分は何のためにモノを作るのか』という技術者にとっていちばん大切な心構えを学びました。それはきっと大学の研究室では得られないものだと思います。そして現在、私は二輪車の電装系の開発に取り組んでいるわけですが、社内では先輩や同期たちといつも「こんなバイクを作りたい」という話で盛り上がっています。ゆくゆくはぜひ、これまでのバイクの概念を変えるような製品を生み出して、世界中の人々に届けたい。それがいまの私の夢です。
「好きこそものの上手なれ」という諺があるように、好きなことを仕事にできるというのは、みなさんの人生にとってとても大切なことだと思います。ですから、興味がある領域で積極的にインターンシップに参加し、自分に合った仕事を見つけてほしいと思っています。